1941年、ニューヨークの社会派劇作家バートン・フィンク(ジョン・タトゥーロ)は大衆的な芝居の成功により一躍有名人となり、ロサンゼルスへやってきた。バートンは、みすぼらしく奇妙なホテル・アールにチェックインした。キャピトル映画の社長リプニック(マイケル・ラーナー)に会ったバートンは、B級レスリング映画の脚本執筆を依頼され、早速部屋に戻りタイプライターに向かうが、暗くて暑いホテルの隣室から、不気味な笑い声が聞こえてきた。声の主は大柄の保険セールスマン、チャーリー(ジョン・グッドマン)で、2人はすぐに打ち解けた。しかし書けないスランプに陥り、リプニックとの約束の時間を目前にしたバートンは、救いを求めて、かつての大作家で今やアル中の雇われ脚本家メイヒュー(ジョン・マホーニー)の秘書兼愛人オードリー(ジュディ・デイヴィス)と一夜をともをともにするが、翌朝オードリーは血だらけでベッドに横たわっていた。驚いたバートンは気を失い、その間にチャーリーがオードリーをどこかに運び去った。運よく締切が延びたバートンは気を取り直し、執筆を再開するが、ホテルにはチャーリーの行方を探る刑事が現れ、バートンのベッドに残る血痕も発見されてしまう。彼らの追求に四苦八苦しているとチャーリーが炎とともに姿を現し、一瞬のうちに刑事を撃ち殺し、燃えさかるホテルの自室へと姿を消した。後日、魂とのレスリングを描いた観念的な脚本を提出したバートンはキャピトル映画をクビになり、ひとり海岸をふらついていると、ホテルの壁にかけてあった絵と同じ女性の姿を見るのだった。

というストーリー。

ミラーズ・クロッシングのコーエン兄弟の91年の作品。

カンヌでは賞を取ったが興行的には、赤字だったと言う。

随分前に、銀座の映画館で見た作品。

急に思い出してしまった。

大衆に迎合することを不安に思いながら、依頼者である映画会社の社長の案を断れずに、嫌々ながら筆を進めるバートンにコーエン兄弟は、自分自身を投影していると言う。

焦燥感を抱えたまま、スランプに陥り、不気味で醜悪に太った男、隣の部屋のチャーリーに翻弄されながらも何故か信じて頼ってしまう。

チャーリーの耳からは耳垂れが流れている。

まさに、このみずぼらしい不吉なホテルそのものの存在感であり、壁紙の糊も耳垂れのように、暑さのために液をたれながら剥がれていっている。

ホテル自体が、まるで生き物のように、バートンを包み込み、真綿で苦しめるように、魔境へ追いやる。

私も、こういう感覚には覚えがある。

建物なのに、そこには何かしらの意思や、人を狂わせる仕掛けや罠や悪意に満ちた想念が渦巻いているような感覚。

眼には見えない何かに突き動かされるように、人が動かされ、破滅に向かわせられる。

そういう感覚的な不快感をコーエン兄弟は、克明に描き出していたように感じる。

アートを巡る旅

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