アートを巡る旅
デヴィット・リンチの80年代の映画を最近思い出した。

主人公の青年ジェフリーは、大学を休学して、故郷のランバートンに帰郷した。

ある日、野原を通りかかったジェフリーは、切断された人間の片耳を発見する。

問題の片耳を、刑事の元に届けたジェフリーは、それが縁で、刑事の娘サンディと知り合う。

サンディから聞いた話では、片耳の事件には、ドロシーというクラブ歌手が関係しているらしい。

ジェフリーは、事件の手がかりを得るため、ドロシーが暮らすアパートに侵入する。

クローゼットに隠れたジェフリーが見たのは、ドロシーがギャングのフランクに脅されて、意のままにされている倒錯した姿だった。

平和で何の変哲もない日常世界からバイオレンス、性的倒錯、異界とも言える非日常的世界に引きずり込まれる。

ドロシーが劇中でジェフリーに言う言葉

「夢を見たわ。夢の中に私たちの世界があったわ。暗い世界だった。コマドリがいないからよ。コマドリは恋愛を表すの。そして、長い長い間、暗闇の世界が続いたの。ところが突然、何千羽というコマドリが放たれて、愛の光をもって舞い降りて来たの。恋愛だけが、暗い世界を変えられるのよ。明るい世界に。だから私は、コマドリが来るまで待つの」

助けを求める女の一途な思い

冒頭の青い空と白いフェンス、真っ赤なバラの幸せそうな情景と

闇の世界が支配するドロシーのアパートの部屋

その対比が見るものを官能的で蠱惑的な世界へと招待する

リンチの作品は悪趣味で暴力的で好まれない向きもある。

この映画に汚れ役で出演したドロシー役のイザベラ・ロッセリーニは、後にモデル、女優の仕事をしばらく干され、映画界からしばらく離れたと言う。

悪趣味だが、なぜか人を引き付け、迷宮へと誘い込むリンチの作品には、コアなファンが多いらしい