数年前の映画、ジョン・クラカワーのベストセラー・ノンフィクション『荒野へ』を、ショーン・ペンが映画化。

実在の人物クリスを余すことなく、主演のエミール・ハーシュがリアルなまでに表現している。

92年、アラスカの荒野に乗り捨てられたバスの廃墟の中で腐乱死体が発見された。

全米を震撼させた衝撃的な事件だった。

遺体の人物は、裕福な家庭で育ち、将来を約束された青年だった。

純粋であるが故に傷つきやすい。孤独を求めるが、人を信じたい。

ごく普通の青年が両親の関係や決められたレールを否定し、物質世界に疑問を持ち、世俗を離れ自然と共に生きるために、たった一人で何も持たずに自分を見つける旅に旅立った。

ジョージア州の大学を優秀な成績で卒業し、ハーバードへの入学が許可されたクリス・マッカンドレス。卒業祝いに新車を買ってあげるという両親の申し出を断った彼は、通帳にあった預金を慈善団体に寄付し、家族に連絡なく無一文でアラスカへ向けて旅に出る。サウスダコタでは放浪者ウェインと親交を深め、スラブスではヒッピーなどアウトサイダーたちが集うコミューンに身を寄せ、そこでトレイシーと出会う。彼女はクリスに好意を抱き、クリスにも恋心が芽生えたかに思われたが、荒野を目指す彼はそこを去る。

一方残された家族は音信不通の息子の身を案じ、皮肉な事に両親も彼を失う事で絆を深めた。皆が彼が無事に帰ることを神に祈った。

様々な出会いで生命力を取り戻しつつあったクリスだが、やはり旅を続け、孤独を好むが故に荒野を突き進む。そこで見つけた廃車になったバスの中に一人住むことを決めた。そして一人で自分の詩の世界に耽溺した。植物を採取したり、動物を捕らえたりして暮らしていたが、荒野は彼に残酷なぐらいに無慈悲だった。

クリスが亡くなる寸前の映像が忘れがたい。

真青などこまでも続く青空、それに真実を求め、一人荒野に生きたが、大自然は彼を見放す。

あれほど疎ましかった家族の事を思い出し、涙を流して一人っきりで亡くなっていく。

人は生きる意味を問うために生きている。

一番大切なものに、真実に気がついたときに、彼の旅は永久に終わる。

真実を追い求めようとした青年の生きた証がこの映画に遺されている

アートを巡る旅

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