竹久夢二と言うと、

アートを巡る旅
私が学生時代に先輩がアルバイトをしている小さな画廊を訪れたことを思い出します。夢二の版画が所狭しと置いていました。

癒されると同時に物悲しい気持ちにもなる不思議な画風に惹かれました。

夢二の描く女ははかなげで、物憂い。若い頃はそう感じていました。

グラフィックデザイン的要素もあり、当時にしては構図が独特で人の目を惹く斬新さが大衆に受けていたのだと思います。

左の黒船屋の女ですが、やたら手が大きいのが目に付きます。女性自体が細く華奢ですが、猫を抱く女の手は大きく表現されています。アンバランスさに存在感を感じます。

まるで、黒猫に自分の命を吸い込まれているような印象さえします。

夢二を取り巻く女たちは、夢二よりも早く夭折した彦乃をはじめ、幸薄い印象があります。

美人画を描く夢二は、自由奔放で抒情的、また退廃的な人生でもありました。

大正浪漫という短い旧き良き時代の転換期を、美人画により表現した稀有な画家でもあったと思います。

女性の美を求める余り、数々の出会いと別れ、そして死を経験します。

作品の中には、単なる女性美と言うよりも、命のはかなさや女性の内面の不安定さ、妖艶さや業を表現されているように感じます。

夢二の女は、どちらか言うと進歩的な女や自立した女というよりも、男性にすがって生きる陰のある物憂い女性を感じます。

かけだしの夢二を支えた妻たまきとのエピソードも、非常に印象深いです。

芸術家肌の夢二は、姉さん女房であるたまきに甘え、自分の創作に煮詰まると、暴力や暴言で八つ当たりしたと言います。

たまきが、夢二の若い恋人の彦乃に、お願いだから、この人を貰ってやってくださいと頼んだ話は、いかにも夢二らしいエピソードで、我侭な年下夫に手を焼くたまきの苦労が垣間見えました。

周りの支えで自由奔放に恋に製作に励む夢二ですが、彦乃の死により人のはかなさを深く理解し、それを表現の世界で昇華したとも言えます。

夢二の描く女は、生きている人間と言うよりも、半分は冥界に存在しているような風情を感じるのは私だけでしょうか・・

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